「ボッチプレイヤーの冒険 〜最強みたいだけど、意味無いよなぁ〜」
第33話

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エルシモとの会見編
<面会>


 ボウドアの村のそばにある丘のふもと、そこにはつい最近建てられた、いや、突然その場に姿を表したと表現した方が正しいであろう館がある。広い庭を持ち、複数の別館を併設するその館は大貴族が所有するような屋敷と比べても大きく、この世界においては考えられないほど豪華な造りをしていた

 そんな館の敷地内にある別館に当たる建物の一つ、一番端にある館の中にアルフィンの姿があった

 「カルロッテさん、この館の暮らしにはもう慣れましたか?」
 「はい、アルフィン様。このようなすばらしい館を提供していただき、本当にありがとうございます。皆、今までの廃屋の暮らしに比べて遥かに住みやすいこの環境にはじめは戸惑いましたが、今はそれぞれいつもの生活リズムに戻っています」

 カルロッテさんの返答に満足そうに頷きながらも、本当にこの館でよかったのかしら? と頭の隅で考えてしまう。だってこの館って、私の基準からするとかなり住みづらいものなのだから

 と言うのも、前に収監所の設備があまりにも豪華だとエルシモさんが私に教えてくれたので、その時に聞いた昔彼らが使っていたという町の宿屋を基準にこの館を設計したからなの。と言っても同じ敷地内に作るのだから、この館だけ特に質素にする訳には行かないので建物自体の造りはしっかりしているのよ。床には本館に比べると劣るけど、そこそこいい絨毯が敷かれているし冬には暖房になるよう一階の暖炉からは煙突とは別に排熱管が各部屋に伸びていて、火をつければすべての部屋が暖まるような工夫がされている

 これは魔法で作る関係上すべての別館を同じ構造にしたからなんだけど、ただこの館だけは他の館とあえて変えてある場所が一つだけある。実はこの館だけお風呂が無いのだ。あ、一応水浴びをすることができる所は作ったわよ。ちゃんと無限に水の湧き出る魔法の大樽を設置してね

 だって女性ばかりなので、外で水浴びをさせるのは可哀想でしょ。でもお風呂を毎日沸かすのは下級貴族でもそうはないと言われてしまったからあえて無くしたんだけど・・・やっぱりつけてあげればよかったかなぁ。水が湧き出るのもお湯が湧き出るのもマジックアイテムのランクとしてはたいして変わらないのだし

 あと、他の館と決定的に違うのはそこに据え付けられた家具の数々だ。この世界ではベットにマットレスがついている事などよほど上質な宿屋でしか無いと言うのが当たり前だとのことだったので、わざわざ木製ベットを用意してその上に麻布を10枚ほど重ねて作ったマットを置き、その上から木綿の布をかぶせたものを用意しておいた。少し硬いだろうけど、毛布も多めに用意しておいたからいざとなったらそれを敷けば少しはましになるんじゃないかな?

 次に椅子や机もなんだけど、ソファーなどの応接セットは一切置かずに特に飾り気の無い木製の机とクッションの取り付けられていない木製の椅子を食事をするために集まる広間に設置しておいた。正直あれでは長時間座っていたらお尻が痛くなってしまうだろう。う〜ん、やっぱりクッションくらいはつけてあげればよかったかなぁ

 その他にも細かな不満点がいくつもあるのよね。確かにあの廃屋よりはいいのだろうけど、これで住みやすいかと言われれば正直頭を捻ってしまう。そんな環境なのだからこそ、移り住んでから数日経って不便だと感じ始める所がいくつか出てきていると思うのだけど

 「気に入ってもらえたのならよかったわ。でも、何か不都合があったら言ってくださいね」
 「いえいえ、不都合なんてとんでもありません。これほどの館、私たちにはもったいないです。ただ・・・」

 右手を前に突き出し掌を広げて手首を振り、私に今の現状にどれほど満足しているか伝えようとするカルロッテさん。しかし、その表情は、何かを思い出したのか一変して申し訳なさそうな顔を作り出す。う〜ん、やっぱり何か不都合があるのかなぁ?

 「どうかしました?何かあれば遠慮無く言ってもらえればいいですよ」
 「いえ、私たちの事ではないのです。お隣のボウドアの村の方の事なのですが・・・この館の水場の、あの魔法の大樽から沸く水を彼らにも使わせてあげる事は出来ないでしょうか?」

 ん? どういう事?

 正直話の先が見えないのでカルロッテさんに聞いてみた所、私が水浴び用にと思って作った場所を彼女たちは洗濯をする場所と勘違いしたみたいなのよ。そこで思ったのはすぐそばにあるボウドアの村では子供たちがわざわざ川まで洗濯に行っているのに自分たちだけがこんなに楽をしてもいいのだろうかと言うこと

 ボウドアの村の人たちには伏せてあるけど、カルロッテさんたちはあの村を襲った野盗の家族だ。そんな自分たちがこんな恵まれた環境でいるのに、あの村の子供たちは重い洗濯物を持ってわざわざ川まで出かけなければいけない。その状況がとても申し訳ないと感じたらしいのよね。でも、この館は私の館の敷地内で他人を簡単に招いていいものではないと考えた為にこんな表情になってしまったそうな

 そうか、確かにわざわざ川まで行かなくてもここまで来れば洗濯もできるし、そもそも水を運ぶと言う一点で考えてもかなり楽になるのよね。でもなぁ

 「気持ちは解るけど、流石に敷地内に誰でも入れるようにするのはできないわ」
 「そうですよね」

 私の返答に肩を落とすカルロッテさん

 ボウドアの村の人たちを信用していない訳ではないけど、それを装って進入してくる人が絶対に居ないとは言い切れないからなぁ、防犯上の事を考えると流石にそれは無理だ。この人たちがここに住んでいても問題が無いのは正直家族を人質にとって居ると言っていい状況だからなのよね。でも、そうでない人をほいほい立ち入らせる訳には行かない。何せ本館には城に通じる転移門の鏡が置いてあるのだから

 でもなぁ、あの村にはまるんの友達であるユーリアちゃん達も居るし、何よりその子達がその洗濯をしているのだ。ならば楽をさせてやりたいと言うのは私も同意見なのよね

 「そうね、この館に招き入れることはできないけど、洗濯をする水場を作るくらいなら出来ないことは無いわね」
 「えっ? そんな事もできるのですか?」

 要は水浴び場だけを門の外に作ればいいだけのことでしょ? 流石に村の中に作るとなるとここを治める領主の了解を取ったりする必要はあるかもしれないけど、この一角は私が報酬としてもらい受けた土地なのだから新たに小屋を一つ建て増したとしても問題は無いはず。それに魔法の大樽なら確かまだいくつか倉庫にあった筈だからね

 「それほど難しい事ではないから、後で手配するわ」
 「えっ!? あれほどのマジックアイテムをお貸しいただける事がそれほど難しい事ではないのですか? まさかそんな・・・いや、あなた様のとってはきっと容易い事なのでしょう。しかし、いかに容易い事だとしても、私ごときの進言を聞いていただけるのですね。本当にありがとうございます」

 満面の笑みで頭を下げるカルロッテさん。他人事なのに自分の事のように喜んでお礼を言うなんて、ホント夫婦そろってお人好しだなぁ

 「さて、この話はここまでとして、今日の本題に入ろうと思います。面会の日時が決まったのでお知らせに来ました」
 「これは、アルフィン様自ら。本当にありがとうございます」

 先ほどとは違い、真剣な顔でお辞儀をするカルロッテさん。使いの者ではなく、私自らその件で訪れた事に対して恐縮しているんだろうなぁ

 まぁ、確かに私がわざわざ来る話ではない。そこで代わりになる者が居るとしたらここに来た事があるメンバーと言う事になるけど、その顔ぶれは一言も言葉を交わしていないギャリソンとこれまた一言も言葉を交わしていないサチコ、そして言葉を交わしているけどすっかり子ども扱いされてしまっているセルニアの3人だ。前の二人だとカルロッテさんが緊張してしまうだろうし、セルニアだと・・・まぁ、そう言う訳で一番最初の面会で問題が起きないようにちゃんと打ち合わせができそうなのが私しかいなかったので消去法で私が来る事になったと言うわけなのよね

 「面会初日は明後日で、以降毎日3人ずつ交代で面会時間が割り当てられます。その際この敷地内にある本館に私の城と繋がるマジックアイテムがあるので、そちらを通って面会場所まで来てもらう事になります」
 「マジックアイテムですか」

 転移ができるマジックアイテムなど聞いた事が無いらしく少し緊張した面持ちでそう答えるカルロッテさん。ただ、この人たちとの始めての邂逅がセルニアのゲートの魔法だった事から、そのマジックアイテムの存在自体は聞いた事が無いけどそれが実在し、なおかつ私が持っていたとしても不思議ではないと考えたらしく、その表情からはこちらを疑う雰囲気は見られない

 「はい。それと来ていただく順番ですが、それはリーダーであるボルティモさんが仲間の方と話し合って決めたそうで、この羊皮紙に書かれています。彼からはカルロッテさんが文字の読み書きができるので渡してもらえれば、こちらの都合が悪くて時間や日付を変更してほしい時はその旨を書き記してくれるだろうとの事だったのですが、大丈夫ですか?」
 「はい、夫の言うとおり私は読み書きができるので大丈夫です。見せていただけますか?」

 そう返答があったのでエルシモさん直筆の面会予定表を渡す。因みに何か余計な事が書かれていないかどうかだけは調べるべきだというギャリソンの進言により解析魔法を使って私が確認し、マジックアイテムを使ってギャリソンが再度確認をしている

 私としては妻への隠しメッセージとか書いてあったら面白かったのだけど、律儀と言うかなんと言うか本当に面会の日付だけがそこには書かれていた。まったく、エルシモさんにはがっかりだよ

 そんな私の邪な考えをよそに、予定表を見て「確かにこの汚い文字は、なつかしいあの人の文字」と呟き少し涙ぐみながらも、内容をしっかり確認してからこの予定通り行ってもらえば大丈夫だとカルロッテさんは私に返答した

 「解りました。この予定表の写しは取ってあるので、これはそのまま保管してもらって結構です。それでは明後日、使者を寄越しますので準備の程、よろしくお願いしますね」
 「はい、ありがとうございました」

 こうして私たちの会見は終わった


 ■


 野盗たちの人数は20人。でも流石にすべての人が家族を持っているわけではないだろうと思っていたのだけれど、エルシモさんが言うにはなんと全員が既婚者でその半分以上の13人は子供が居るそうな。そしてエルシモさんにも子供が居るらしく、面会当日は朝からそわそわしていたそうでミシェルに対して「今日だよな? 俺、日付を間違えてないよな?」と何度も聞いてきたらしい

 奥さんはエルシモさんの文字を見ただけで涙ぐんだくらいなのに彼の心は奥さんそっちのけで子供に会えるという事だけでいっぱい見たい。ホントひどい話だ。まぁ、解らない事も無いけどね

 そして今、当のエルシモさんは面会所の一室に居る。この面会所は収監所を取り巻く壁の一部を切り崩してその場所に建てられていて、塀の外からも中からも入ることができる建物として作られている。そして実際に面会する部屋なんだけど、はじめはテレビで見たことがあるような透明な板越しに会えるようにしようとしたんだけど、残念ながらこの世界にはアクリル板やプラスチックと言うものが存在しないので作るとしたらガラスでと言うことになり強度がちょっと心配だったのよね

 それに何より、エルシモさんたちが面会と言う制度を知らなかったから普通に家族と会えると思っているようで、子供を久々に抱けると涙を流して喜んでたその姿を間近で見せられたミシェルが私にわざわざ会いに来て

 「あの姿を見て、実はガラス越しにしか会えないのですよなんて私にはとても言えません。ですから、なにとぞアルフィン様のほうから伝えてください」

 と言いながら芝居がかった土下座で頼んできたので断念した。うん、私にだって流石に言えないよそんな状況ではね。そしてその私の決断を聞いてミシェルは我が事のように喜んでいた。管理人と言う立場からほぼ毎日接してるミシェルにとって、エルシモさんたちは家族みたいな存在に思えているのかもしれないわね

 
 ■


 最初の面会はリーダー特権なのかエルシモの家族だった

 面会所では本人たちだけで会わせる訳ではない。それは前もって了解を取っていた事で、仕切りなしで会う事になった以上子供が居るならともかく妻と二人きりにしてはいきなりへんな事を始めかねない。そこで面会の際の細かい規則を作り、なおかつ双方に監視員をつけて禁止事項を犯したのを確認した場合は面会は即中断させるとの条件をつけている

 今回の場合はエルシモの付き添いでミシェルが、カルロッテとお子さんであろう5歳くらいだろうの男の子の付き添いでサチコが一緒に面会所の一室に入った。見張りが居てなおかつ禁則事項があると言っても当然子供を抱き上げたり、妻と手を握ったり程度のことは許可をしているし、そこまで厳しく見張っている訳ではない。少々のスキンシップなら、そう初回の面会の時くらいはと、久しぶりに再会した夫婦のハグはその二人も見て見ないフリをした
 
 「ああカルロッテ、逢いたかったよ。それにエリナスも。二人とも元気だったか?」
 「パパ、逢いたかったよ」
 「あなた、やっと逢えた、やっと逢えたわ」

 夫婦親子の再会に感動し、少しだけ涙ぐむミシェルとサチコ。しかしそんな感動の再会もちょっとおかしな方向へと向かっていく

 「二人とも、ちゃんと食べてるか? 病気とかしていないか?」
 「大丈夫よあなた。アルフィン様に良くして頂いているから。それにあなたも大変だったでしょう。こんなにやつれて・・・あら? やつれてはいないわね」

 ほんの少し、ほんの少しだがカルロッテの瞳に疑惑が宿る

 「そっそんな事は無いぞ。毎日朝から晩まで働き通しだ。ただ、外での労働だから日に焼けて健康的に見えるだけだと思うぞ」
 「その割には体も髪の毛も清潔よね? それにあなた、収監所に入る前よりちょっと太ってない?」
 「ねぇママ、パパからいいにおいがするよ」

 ギクッとするエルシモとすかさず彼の匂いを嗅ぐカルロッテ。そして

 「これって石鹸の香りよね。それもかなりいいもののような気がするのだけれど」
 「そっそれはだな・・・そう! 面会の前にアルフィン様が風呂に入れてくれたからその時に使わせてもらえたんだ。別に毎日入っているわけじゃないぞ」

 カルロッテの追求にしどろもどろになるエルシモ。そんな夫の姿を見たカルロッテはミシェルたちのほうを向き直り

 「メイドの方々。夫の言っている事は本当でしょうか?」
 「いえ、彼らは毎日お風呂に入られております。また、前にアルフィン様から「今まで入る習慣がないのであればお風呂は毎日入れなくてもいいのでは?」と言われた際にボルティモさんは土下座をして毎日入らせてほしいと懇願されたそうで、それならば仕方が無いと毎日沸かすようにと言い付かっております」

 これを聞いたカルロッテの目がつりあがる

 「あなた! お風呂を毎日沸かすのにどれだけの薪代が掛かると思っているの! アルフィン様にそんな負担を強いるなんて! 恥を知りなさい!」
 「かぁちゃん、ごめん!」

 自分たちの生活環境に多大の援助をしてくれているアルフィンに夫がそんな迷惑を掛けていたのかと聞いて怒髪天を突くカルロッテと、そんな奥さんの勢いに震え上がるエルシモ。そしてちょっとしたいたずら心でばらしただけなのに、大事になってしまっておろおろするミシェルを見てサチコは思わずため息をつき、この騒ぎを収めるために口を開いた

 「カルロッテ様、収監所ではお風呂を沸かすのに薪などは使わず、お湯を沸かすマジックアイテムを使用しているのでアルフィン様はなんの迷惑も被ってはおりません、。ですのでご安心ください」
 「そっそうなのですか。すみません、お騒がせして」

 カルロッテのお詫びを受け入れた後、サチコはミシェルに向き直る

 「後、ミシェルもいたずらがすぎますよ。まぁ、事実を伝えただけなので強くは非難できませんが」
 「すみません」

 ミシェルの謝罪によりこの騒動は治まり、その後は和やかに面会時間はすぎていった


 ■


 こうして面会は滞りなく進み、以降は特に問題も起こらずにその作業を繰り返すだけだとアルフィンは考えていた。しかしそんなアルフィンの考えは甘かった。そう、パンケーキに蜂蜜とメープルシロップと練乳をかけたものよりも甘かったのだ

 「姫さん! お願いだ、何とかしてくれ!」
 「えっ? えっ? なんなの? 何があったの?」

 それは面会を始めて1ヶ月。3回目の面会を果たしたエルシモから泣き付かれる事によって発覚した



 話は初めての面会を許すと決めた日にさかのぼる

 「マスター、面会には子供たちも来るんだよね?」

 うきうきしながら話しかけてくるシャイナ。それはそうだろう、大の子供好きのシャイナの事だ。小さな子供がこの城の近くに来るのだから嬉しくて仕方がないのだろう

 「そうだけど、それがどうかしたの? その子達と遊びたいと言うのだろうけど、それを許可するかどうかは私が決める事じゃないし、カルロッテさんたちがいいと言うのなら私は止めないというのはシャイナも解ってるよね?」
 「そうだね。マスターも一緒に遊びたいと言い出す事はあっても反対する事はないというのは解ってるよ」

 ならば私に何か許可を取る必要はないから、前もって何かを言う事はないよね。ではなぜ私に話しかけたのかなぁ?

 「それが解ってるのなら、遊ぶ云々ではないって事だよね? それ以外に子供たちが来る事で私に確認することって何かあったっけ?」
 「確認と言うか許可をして欲しい事が在るんだよ」

 そう言いながらシャイナは私の顔色を窺う。その顔はきっと私は反対しないだろうと確信したような顔だ

 「もう、許可を取るとか言っている割には初めから反対しない事を確信してるんでしょ。なら無茶な話じゃないだろうからいいわ、言ってみなさい」
 「うん、マスターは絶対反対しないと思う。それはねぇ、子供たちが来るのなら甘いものを振舞ってあげたいなぁと言う話なんだ」

 シャイナが言うには、前にボウドアの村を救った時にまるんがユーリアちゃん達に持っていたクッキーを振舞って友達になったと聞いて悔しかったんだって。だから今回は自分が子供たちに甘いものを振舞って仲良くなりたいのだそうな

 「それはいい考えね。なら私が振舞って人気者になろうかな」
 「あっマスター、それはずるい」

 そんな事を言い合いながら当日は何を振舞おうかとか、流石に子供だけに出して奥さんたちに何も出さないのは悪いから軽食くらいは出した方がいいよねとか、それならば食堂と調理場も面会所に作らないといけないわねなんて事を話し合って、当日、実際にお菓子とお茶、そして軽食を用意して振舞ったのよ



 で、話は今に戻るんだけど

 「姫さん、エリナスが、エリナスが」
 「だからどうしたのよ、お子さんがどうかしたの?」

 エルシモさんのお子さんならさっき面会所の食堂で元気にアイスクリームを食べていたと思うけど? 口の周りをべとべとに汚しながらも、満面の笑みで食べていたあの可愛らしい姿からは特に問題がありそうな所は見つからなかったけどなぁ

 「エリナスが、お父さんはもういいから早く食堂へ行こうって面会を5分ほどで切り上げて帰ってしまったんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
 「あら」

 どうやら予想以上にお子さんたちに甘いものが高評だったらしくて、お父さんとの面会よりも早くお菓子を食べたいと言い出してしまったそうな

 「頼むよぉ、姫さん、何とかしてくれよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 なんとも情けない顔で泣きつくエルシモを前に、さてさてどうしたものかと悩むアルフィンだった

あとがきのような、言い訳のようなもの



 美味しいものに釣られたのは子供だけではなく、実は奥さんたちも面会後の軽食が楽しみで面会を速く切り上げようとしだした為に、この後面会は食事をしながらに変わったのはまた別の話ですw また、カルロッテはこの軽食を食べる事によってエルシモが太った理由も看破しています

 さて、野盗収監編はこれで本当に終わりです。とは言えこの話に出てきた人たちはこれからも出続けますが

 今回の話しに出てくる館の設備ですが、相も変わらずアルフィンは自分の基準から考えてしまっておかしな事をやっています。まずベットですが普通の宿屋は床に毛布を敷いて寝ていると言われたのにそのことをすっかり忘れてしまい、麻布を使ってマットを作ったうえに木綿のシーツまで掛けています

 ボウドアの村に一度行っているのだからそれが一般的に見て比較的豪華なものだと言う事が解ってないんですよね。ただ、この館に住んでいる人たちのほとんどはそのベットを使っていません。と言うのも、本編に書かれている通り床に本館ほどではないにしても比較的いい絨毯が敷かれているから。そりゃ、麻のマットよりも絨毯の方がふかふかで寝やすいですよねw

 あと私のSSオリジナルマジックアイテム、無限に水が湧き出る大樽ですが、これの価値もアルフィンはあまりよく解っていません。なので平気で敷地の外に設置しようとするのですが、ギャリソンあたりはちゃんと理解しているので盗難防止用にこっそりとモンスターを配置します

 そのモンスターは実はスライムでいつもは配水管の中に潜んでいて、夜になって扉が施錠されると抜け出して敷地内を掃除して回るという、アインズ様が風呂場で飼っている三助と同じ様なスライムだったりします。でもこれ、本当に居たらとても便利ですよね。うちにも一匹ほしいなぁ

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